光受容タンパク質を用いた人工受容野の作製と画像処理

「網膜神経節細胞」で処理された視覚情報は,脳の「外側膝状体 (LGN)」から大脳の「一次視覚野」へと順に伝えられる.これらの視覚細胞がもつ限られた視野,すなわち小さな窓のことを受容野と呼ぶ.受容野の形は,図1に示すようにどの領域のニューロンのものかによって大きな違いがある.神経節細胞や LGN のニュー ロンは,同心円状のDOG型,一次視覚野の単純細胞のニューロンはGabor型の受容野をもっている.それぞれ興奮領域と抑制領域で構成されていて,周辺部に光を受けたときに 抑制応答,中心部では興奮応答という極性の異なる電位応答を示す.ここでは,視覚機能タンパク質バクテリオロドプシンが示す正負の極性反転微分応答を,視覚系受容野の興奮性と抑制性応答に読み替えて受容野型画像処理素子を実現する.図2はバクテリオロドプシンを用いたDOGフィルターおよびGaborフィルターの構造を示す.このアナログ1画素素子を用いて,リアルタイムでエッジ検出や方向検出を行う.図3(a) は入力画像,(b) デジタルDOGフィルタリング結果,(c) bR-DOGフィルタースキャン結果を示す.図4はbR-Gaborフィルターによる欠陥検出結果例で,投影画像をスキャンするだけで,わずかなピッチの違いを検出することができる.
 加古さんが,本研究テーマで2022年材料技術研究協会討論会(東京理科大学12月)にて,優秀口頭発表賞を受賞しました.

 
            図1                 図2


図3

図4