カロテノイドを電子ドナーとして用いた有機薄膜太陽電池

有機薄膜太陽電池(OSC)は,作製プロセスの簡易さと省エネルギー性,軽量でフレキシブルな機械的特性をもつ.現在その変換効率はa-Si太陽電池を超え,さらなる効率や安定性の性能向上が期待されている. ただし従来のOSCの光電変換材料には合成ポリマーが用いられており,その合成プロセスには多量の有害な溶媒とエネルギーを消費する. 本研究は地球上に豊富に存在する天然色素カロテノイドをOSC活性層の電子ドナー材料に直接適用し,Sustainable Development Goals(SDGs)およびグリーンケミストリーへの貢献を目的とする.大気中での安定性が高いとされる逆構造で作製したβカロテンOSCを図1に示す.組み合わせる電子アクセプター材料や活性層ナノ形態の調整によって変換効率の向上をめざしている.また金属電極の成膜条件を変更して,窓太陽電池への応用が期待されるOSCの半透明化を行う(図2).安定性に関しては,βカロテンのみの膜では光照射(100 mW/cm2)によって数分程度で完全に脱色することが知られている.ただし,アクセプター材料との混合や金属電極の被覆といったOSC作製プロセスによって24時間照射に対しても脱色は見られず,高い大気安定性を示す.

        図1                    図2