導電性ポリマーを用いた全有機光検出器

液晶ディスプレイや太陽電池の透明電極には,高い導電性と透過性をもつ酸化インジウムスズ(ITO)が広く用いられる.しかしレアメタルであるインジウムの枯渇と高コストという問題がある.代替材料として,安定供給可能かつ低コストな導電性ポリマーが注目され,特にポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT:PSS)は平滑性に優れ,柔軟性があり,水分散系への極性有機溶媒添加による高導電化が容易な優れたポリマーである(図1).一方,インクジェット印刷法は必要な部分に材料を直接塗布でき,材料のロスを減らせるため,低環境負荷・低コストな成膜法である.PEDOT:PSSを図2のマテリアルプリンターのインクとして用いると,大面積電極や図3のような回路パターンが容易に印刷できる. 本研究では図4のように,bR光検出器のITO電極をPEDOT:PSS電極に変更して,低環境負荷・低コストの全有機光検出器を作製している.


図4 全有機光検出器.(a)セル構造.(b)出力波形.

図1 PEDOT:PSS懸濁液.

図2 マテリアルプリンタ.

図3 PEDOT:PSSを用いた回路パターン.