視覚機能をもつ光検出器とロボットビジョンへの適用

バクテリオロドプシンに光を照射すると,プロトン(H+)が細胞膜の内側から外側に輸送され,菌体内外に濃度勾配ができる.好塩菌はこれを利用してATP合成,つまり光合成を行っている.電極ー溶液界面にbR薄膜を固定し,光を照射すると,光照射ONとOFFの瞬間にのみ,一過性の光電流が発生する微分応答性を示す.この視覚特有の光電応答はプロトンポンプに起因する電極表面のpH変化に由来する.ここでは微分応答特性を利用した視覚機能をもつ光検出器の実現,およびマイクロマウスビジョンなどへの適用を目的として,高感度化,高機能化をめざしている.具体的には,検出器に封入する電解質溶液(緩衝液,pH)や検出器構造(電極面積,電極間距離)などを検討している.
図1は透明電極で挟んだ電気化学セルの構造である.図2は野生株(WT)bRの光電流応答パターン例を示す.図3は視覚センサーを搭載したマイクロマウスロボットで,全日本マイクロマウス大会で特別賞を受賞した.
さらに速い動きに大きく反応し,遅い動きには反応しない微分応答性を利用して,リスク回避用センサーを作製している.
ロボットビジョンへの適用は,本学知能機械工学専攻 田中一男研究室 との共同研究である.

図1
図2
図3